「食」は極めて官能的な世界です。ビールや料理も例外ではありません。その官能の世界を理論的かつ感覚的に究め、適切なビールと料理の組み合わせ方を指導・アドバイスできる人を「ビア・コーディネィター」といいます。
「ビールに合う料理」といわれるものは、これまでビールが飽きずに飲めることにポイントを絞った塩辛い料理か脂濃い料理のバリエーションが中心でした。しかし、ビール文化が成熟している英国や北ヨーロッパには、ビールと合わせることによって料理そのものの味を豊かにするという伝統があります。
こうした伝統は、近年になってクラフトビールが盛んなアメリカにも取り入れられました。ニューヨークやシカゴでは、ビールの銘柄と料理をペアにしたメニューを用意して客に提供するレストランが増えているといいます。
アメリカでの動きは、ビールと料理の「ペアリング」と呼ばれ、最近は日本でも注目されるようになりました。上手にペアリングされたとき、お互いの持ち味を殺さずに楽しめます。ペアリングに失敗したときは、料理の塩味にカドが出たり、甘味が濁ったり、渋みが重くなったり、油の風味が嫌みなってしまいます。また、ビールの苦味が濁ったり、アロマが消えたりします。そうならないようにビールの銘柄と料理のメニューを設定するのが、ペアリングのポイントです。そのためには飛び抜けて豊かな感性が求められ、だれでも上手なペアリングができるわけではありません。
ペアリングの考え方も大変素晴らしいものですが、日本地ビール協会のビアコーディネィター講習会で教える「ビールと料理のマリアージュ(結婚)」は少し趣を異にします。その目的は、ビールと料理を合わせて「第3のフレーバー」を造り出すこと。それは結婚によって生まれる子供のようなものですから、「ペアリング」ではなく「マリアージュ」と呼びます。
ここでは、ビールの銘柄や料理メニュー以前に、ビアスタイルごとのフレーバーの違い、料理に用いられる食材・調味材ごとのフレーバーの違いを重視します。マリアージュのポイントは、「フレーバーの相互作用(シナジー効果)」によって、料理やビールに隠れているすばらしい香りや味、つまり「第3のフレーバー」を引き出すことです。同時に、表に出ている好ましくない香りや味があれば、それらを消し去ります。
ビールから感じられるフレーバーの特徴は、ビールのスタイルごとに異なります。料理のフレーバーは、同じメニューであっても食材、調味材、調理方法によって違います。そのため「ビールと料理のマリアージュ」講習会では、ホップやモルトのほか発酵工程で生まれるビールのフレーバーの特徴について詳細に学びます。料理に関しては、バター、醤油、油、各種ソースなど調味材がもたらすフレーバーの違い、肉類、魚類、貝類、野菜類、果実類などの食材が持つフレーバーの違い、焼く、揚げる、煮る、蒸すなど調理方法でつくられるフレーバーの違い、ハム、ソーセージ、チーズなど加工方法によるフレーバーの違いについて解明します。その上で、類似のフレーバーを組み合わせたとき、あるいは異なるフレーバーを組み合わせたときに生まれる「第3のフレーバー」を解説し、受講する方々に実際に体験していただきます。
「ビールと料理のマリアージュ」講習会で「フレーバーの相互作用」をしっかり理解し、ビアスタイルの違いや食材・調味材・調理方法の違いがもたらすフレーバーについての知識を深めることができれば、どんなビール、どんな料理にも応用できます。また、だれでも完璧なマリアージュをつくりだすことができます。
「ビールと料理のマリアージュ」講習会で「ビア・コーディネイター」の資格を取得すると、ビアパブやビアレストランで働く人にとってキャリアアップにつながります。また、一般の方々もビールのある食の時間をもっと豊かに過ごすことができるようになるでしょう。講習会の講義終了後に認定試験を行い、合格者には「ビア・コーディネイター」の認定証及び認定バッジを授与します。
※会員の方は合格時の認定料・認定書・認定バッジを含みます
受講のみ(認定試験は会員の方のみ受験可能となります)
筆記試験20問