ジャパン・ビアカップ2000 審査講評

“ジャパン・ビアカップ 2000” 審査委員長 田村功 
    
 去る7月15日に開催された“ジャパン・ビアカップ 2000”には、景気の回復が見えにくい状況にもかかわらず65社 175銘柄ものビールにご参加いただいた。審査委員長として、心から感謝の意を表したい。日本地ビール協会主催「ジャパン・ビアフェスティバル」と連携して行われるこのビア・コンペティションも、今年で3回目を迎えた。年を重ねるに従い地ビールの品質が着実に向上してきている跡が窺えて、まことに悦ばしい。販売が低迷している中でも、多くの地ビール・メーカーが技術の錬磨を怠りなく続けていることが証明され、非常に心強く感じられる。

 周知のように、昨年の“ジャパン・ビアカップ”で優勝した日本の地ビールは、世界の檜舞台である“ワールド・ビアカップ 2000”の様々なカテゴリーで入賞している。この事実は、日本の地ビールの品質がすでに国際水準の上位レベルに至っていることを物語っているばかりでなく、“ジャパン・ビア・カップ”の審査方法そのものが、国際化時代にふさわしく、グローバル・スタンダードにのっとった権威あるものであることを実証していると言えよう。

 “ジャパン・ビアカップ”が採用している国際的な審査方法とは、各カテゴリーごとに 「ビアスタイルとの合致度」、「全体印象」(調和・バランスから見た完成度)、「オフフレーバーのレベル」の3点を6人のジャッジが審査・採点し、高得点を得たビールをジャッジ全員で協議の上、金・銀・銅の各賞を決定するというものである。各ジャッジの採点結果は「官能評価シート」に記入され、参加したメーカーに送られる。

 今年の審査を通しての第一印象は、ビアスタイルの規準に合致しているビールが前年よりも格段に増え、またオフフレーバーのレベルも許容値まで低減しているビールが非常に多く見られるようになったことだ。そして、調和・バランスから見た完成度も総じて著しく向上し、入賞するかしないかは実に紙一重の差でしかなかったことを強調しておきたい。

 しかし、カテゴリーごとに細かく見ていくと、品質レベルにバラツキがあったことは否めない。ヴァイスビール、ジャーマンエール、イングリッシュ・ダークエール、アメリカンエール、フルーツ/スパイスビール、ベルジャン・スペシャル・ビールなどの部門では、参加したビールの多くが国際水準を超える見事な出来映えであった。

 その反面、アメリカンエール、アメリカンラガー、スモーク/ライスビールの部門ではエントリーしたビールの数が少なかったこともあって、質・量ともに寂しさが見られた。また、イングリッシュ・ライトエール部門はエントリー数も多く、それだけにオフフレーバーのレベルや味わいの調和・バランスの面で非常に高い水準にあるが、スタイルの観点からはいまひとつ完璧とは言い難い。とくに使用しているホップの品種やアロマ・レベルに関して、入賞ビールも含めてもう少し研究の余地があろう。

 とはいうものの、総体的には“グレート・アメリカン・ビアフェスティバル”や“ワールド・ビアカップ”での審査体験と比較して、今年の“ジャパン・ビアカップ”に参加したビールの品質は、それらとなんら遜色のない水準に達していると断言できる。地ビールの品質は、このように国際水準まですでに達してはいるが、しかし、そのことをなによりも消費者に知ってもらわなければ意味がない。出来立てのビールの品質を、時間を経た後も、いかにしてそのまま消費者の口に届けるか。これが、今後の大きな課題になろう。「品質の確立」とともに「品質の安定化」という両輪が揃ってこそ、初めて地ビールに対する消費者の信頼を高めることができるのである。

 今度、日本地ビール協会とドイツのDLGが中心となって地ビールの品質安定度を審査する“UQ賞”という制度が設定されるが、“ジャパン・ビアカップ”で「品質の確立」、“UQ賞”で「品質の安定化」が顕賞されれば、消費者の信頼を築くための両方の輪がここに整うわけである。 言わば、企業の決算書であり、例えるなれば“ジャパン・ビア・カップ”での「品質の確立」は「貸借対照表」であり“UQ賞”での「品質の安定化」は、「損益計算書」である。

 また、来年の“ジャパン・ビアフェステイバル 2001”及び“ジャパン・ビアカップ 2001”は、東京・恵比寿にあるカーデン・プレイスに会場を移し、5月12日、13日の2日間にわたって行われる。ローケーションが良い上、スペースも広大で、これまでの倍近い数のビール・ファンが集まるものと期待される。地ビールメーカー各位には、
“ジャパン・ビアカップ”の趣旨と意義を一層深くご理解いただくともに、来年も絶大なるご協力ならびにコンペティションへの奮ってのご参加をお願いする次第である。


HOME