インターナショナル・ビアコンペティション 2001 審査講評

インターナショナル・ビアコンペティション
チーフジャッジ 田村 功
審査委員長 小田良司
  
 去る9月2日に行われた“インターナショナル・ビア・コンペティション 2001”には、20を超える外国銘柄を含め133銘柄のビールにご参加いただいた。悪化の一途をたどる景気の中ではまずまずの結果に終わり、ご協力いただいた地ビールメーカー各位および輸入販売社各位に対し、まずもって深く感謝の意を表したい。その上で、今後のビールの品質向上のために敢えて苦言を申し上げることをお許しいただきたい。

 今回の審査を終えてまず最初に感じたことは、景気の低迷が地ビールの品質に微妙な影響を与えていることである。今回は44の部門(カテゴリー)にエントリーがあったが、そのうち金・銀・銅の3賞が揃って出たのはわずかに5部門(11.4%)しかない。3賞揃って出た部門の数を過去にさかのぼって見ると、一昨年は11部門中7部門(63.6%)、昨年は47部門中8部門(17.0%)であり、景気の悪化が進むにつれ入賞レベルにあるビールが少なくなっていることが分かる。
  
 このことを顕著に表しているのが「ヴァイツェン」である。正確には「南ドイツスタイル・ヘーフェヴァイツェン/ヘーフェヴァイスビア部門」(一昨年までは「ヴァイスビール部門」)であるが、この部門では過去5回とも常に3賞が出ていた。しかも品質レベルの高いビールが多く、互いに競い合って3賞から“落とす”のに困難を極めたものである。それが今年は2賞だけが選ばれ、残る1賞にはどうみても該当するビールが見当たらなかった。これまで「ヴァイツェン」は地ビールの中でもっとも銘柄の多いビールとして知られ、人気や消費量の点でも地ビールを代表するスタイルの一つであった。それだけに、この部門で「該当なし」が出たことは地ビールの意気消沈ぶりを象徴しているようで、まことに残念極まりない。
  
 今回の審査を通して2番目に印象に残ったことは、外国ビールの入賞が増えたことである。これについても過去をさかのぼってみると、一昨年が1銘柄、昨年が4銘柄、今年が7銘柄と、年を重ねるたびに着実に増加していることが分かる。年々参加するビールの数が増えているからという指摘もあるが、入賞するかどうかは数とはあまり関係がない。とくに外国ビールは、長距離輸送や長期保管による風味の劣化というハンディを背負っている。そうした中で、外国ビールの入賞が増えたということは、輸入販売関係者が劣化・酸化への対策に取り組み始め、その努力が着々と実ってきていることを物語っている。入賞したビールの関係者には、心からのお祝いを申し上げたい。
  
 次に、とくにエントリー数の多かった部門について講評を記したい。「南ドイツスタイル・ヘーフェヴァイツェン/ヘーフェヴァイスビア部門」については前述の通りであるが、さらに付け加えると、今回はアロマやフレーバーを強調し過ぎて全体の風味バランスを崩しているものが多かった。「ジャーマンスタイル・ケルシュ部門」については“スッキリ、豊潤”がもっとも重視されるポイントであるが、この点に合致するビールは少数であった。「ジャーマン・ピルスナー部門」については“新鮮なホップアロマ”、“強くてクリーンな苦味”、“ドライでみずみずしい口当たり”がポイントであるが、これらの条件を満たしているビールは入賞したビールだけであった。また、酸化による風味の劣化がみられたビールも目立った。「イングリッシュスタイル・ブラウンエール部門」については、本来はホップのキャラクターが希薄で、支配的なアロマやフレーバーはモルトに起因するものでなければならない。しかし、エントリーされたビールは、ビールとしての風味バランスはおしなべて良かったものの、残念ながらホップのアロマとフレーバーが前面に出ているために、この点が減点の対象とされたビールが多かった。もう少しスタイルの特徴を勉強していただきたい。
  
 今回の収穫を挙げるとすれば、なんといっても「イングリッシュ・ペールエール」の格段の向上を指摘しておきたい。英国品種のホップをきれい効かせることに成功し、かつ風味全体がバランスよくまとまり、苦味もクリーンでスッキリとドライに決めたものばかりであった。入賞したビールは甲乙つけ難いと言ってもよいくらいの素晴らしい出来映えである。
  
 最後に、今回の審査を滞りなく進める上で、ビールの仕分け、管理、配膳、後始末などの煩雑な作業を実に手際よく進めてくださった木村チーフディレクターとデレクターのみなさんに対して、審査員を代表して心から感謝の念と労いの気持を表したい。
  


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