インターナショナル・ビアコンペティション 2000 審査講評

インターナショナル・ビアコンペティション
チーフジャッジ 田村 功
審査委員長 小田良司


 本年度のインターナショナル・ビアコンペティションには国の内外合わせて61社から151銘柄のビールが参加し、10月7日、午前9時から午後6時まで大阪・梅田スカイビルで審査が行われた。ご出品いただいた各ビールメーカー、輸入ならびに販売会社には、心から感謝の意を表したい。

 今回で5回目を迎えた今年のコンペティションの特徴としては、従来よりも審査カテゴリーを増やして71カテゴリーとしたことが挙げられる。これは、地ビールのスタイルがますます多様化し、ヨーロピアンスタイル・ピルスナー、カナディアンスタイル・エール、エクスペリメンタル・ビールなど、これまでの括りでは対応しきれないビールが多数登場したことを反映したものである。また、カテゴリーを増やしたことにより、各スタイルごとに公平に3賞の受賞枠が用意され、優れたビールが正当な評価を受けることができるようになった。

 本年度の審査を終えて、強く印象に残ったことが二つある。

 一つは、いわゆるヴァイツェンと称される南ドイツスタイル・ヘーフェヴァイスビアの品質が、格段に向上していることであった。エントリーしたビールは、いずれもスタイル規準から見て完璧である上に、ビールとしての完成度が非常に素晴らしいものであった。このカテゴリーの審査を担当した6名のジャッジは、全員が今年ドイツでヴァイツェンを含むドイツの全てのビアスタイルについて研修を受けているが、その彼等の舌を驚かすほどの見事な出来栄えであったことは特記に値する。ヴァイツェンに限っては、もうドイツと比べてもなんら遜色のないレベルに達していると断言できよう。しかも、これだけ粒が揃って一堂に集まる例は、ドイツといえどもめったにあることではない。幸いにして入賞したビールは、たまたま他よりも状態が良かったという以外に、決定的な理由はなかった。

 もう一つ強く印象に残ったことは、まさに「感動」という言葉に値するほど卓越した出来栄えのビールが複数参加していたことである。なかでもエクスペリメンタル・ビール部門、ストロングエール部門、バーレイワイン部門、ドライスタウト部門、ヴァイツェンボック部門でそれぞれ金賞を獲得したビールは、審査が終ってもテーブルからグラスが下げられるのが惜しまれるほどの深い感銘を、すべてのジャッジに与えた。造り手の真摯な努力とすぐれた感性を高く評価したい。

 コンペティションでの評価はスタイル規準に合致しているかどうかが大きなウエイトを占めているが、決してスタイルがすべてではない。スタイル規準はあくまでもスタイルの特徴を示すガイドライン(指針)にすぎず、審査で最重要視されるのは全体の調和とバランス、つまり美味しいかどうかである。そして、調和とバランスが見事に造り出されているかどうかは、ひとえに現場でビールをつくる造り手の技術と感性にかかっている。そういう意味から、本年度は表彰状にブルーワーの名前を付記することにした。受賞によってブルーワーの日頃のご苦労が少しでも報われることを切に願うものである。

 最後に、審査にあたったジャッジと、裏方でビールの管理・仕分け・配膳など煩雑な作業に翻弄されたビアディレクターの諸兄姉に、衷心からの感謝とねぎらいを表したい。ビールを出品してくださった各社のご理解とご協力は無論のこと、彼等の献身的なボランティア活動がなければ、今回もコンペティションの成功はおぼつかなかったであろう。


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